著作権あれこれ


著作物の存在事実証明

 著作権は著作物を創作したときに発生します。権利の発生のため登録やマークをつけたり、何らかの方式は必要ありません。
 しかし、苦労して創作した自分の著作物を真似たとして争う場合に、相手方より先に創作したのだと立証することは極めて難しい。また、プログラムの著作物を除いて、創作年月日の登録をする制度はありません。
 この現実に対して、著作者の権利を守るために、後日紛争が生じたときの立証資料を確保するのがこの存在事実証明です。
 行政書士は権利・義務、事実証明に関する書類作成ができます(行政書士法第1条の2)。これに公証人の確定日付を得て立証資料とするものが存在事実証明です。
 著作権の登録は著作物自体の登録ではありません。また50部以上の複製物の発行とか、展示などの方法で公衆に提示する(公表)することが登録の要件となっています。これに対して著作物の存在事実証明はそのような登録、公表がなくても行えます。創作したことの立証として優れた方法だと考えます。


※存在事実証明は、日本著作権機構がその方式・証明フォームを考案・創作したものです。許諾番号CopyTrust-G402(業としての存在事実証明登録者/日本著作権機構)


※存在事実証明は、著作権の取得やその存在を証明するものではありません。著作権の侵害、例えば無断複製があったとして、当事者の話し合いで使用差止、損害賠償が決まればよいのですが、こじれれば、裁判で決めなければなりません。このような話し合い、訴訟に備えてあらかじめ立証資料を作っておこうというものです。つまり、創作された著作物がありますよ、真似たら、権利を主張しますよという著作者の権利保護のための手段です。真似られても立証に手間隙のかからない著作者には不要です。
著作権の登録(民間登録)をすることにより、特許権まで保護されるという主張をする団体があるようですが、それらとは無関係です。

著作物利用契約

著作物を利用させる(利用する)にあたって、利用方法・料金等をきちんとしておきたい。

 

 著作物は、保護期間が経過していたり著作権を制限する規定に該当すれば、権利者に無断で利用できます。しかし、利用形態に応じて、著作権者の利用許諾を得ていないときは、後日、差止や損害賠償の請求を受けたり、刑事罰を受ける危険があります。著作権意識が高まってきていますので、きちんと権利処理(著作物利用許諾契約)をしてから著作物を利用すべきでしょう。

 

 ところで、著作物を創作する時にもきちんと契約をして、後日のトラブルを防止すべきです。著作物製作を外部に発注(制作委託契約)した時に、著作物やその複製物につき、発注者が所有権を取得しても、著作権は受注者に残っています。このようなときに、著作権(財産権)を発注者に移転し、人格権を行使しないこととし、又、二次利用にも配慮した契約書を作っておかないと、後々面倒なことになります。著作者も著作物を利用する者も、問題が生じたときに、直接、著作権法にあたるという発想ではなく、きちんと契約書を作っておく時代がきています。

 

 さて、商品や建物などのような動産、不動産については、売買契約書、賃貸借契約書のような典型的な契約書(ひな型)があるので、それに応じてそれらの契約書が作成できます。しかし、無体の著作権についてはそのような典型的な契約書のひな型がありません。これは、著作権は、複製や上演・演奏、公衆送信、口述、展示、頒布、譲渡、貸与等の支分権に分かれ、かつ相互に絡み合い、又、利用の範囲、使用料などが個々の具体的な著作物によって、複雑になるからだろうと思います。また、今まで契約などせずに業界内であいまいな口約束程度で済ませてきたからでしょう。

 

 けれども、これからはそうはいかなくなりそうな気配です。国民誰もが創作者であり、利用者となる時代に入り、著作物の無断利用、経済的価値に注意がいくようになりました。個々の具体的な著作物の創作、利用について利害対立のある当事者同士が交渉して契約内容をまとめていくほかありません。私は、法律的に、依頼者の有利になるように契約書を作ることになります。厄介な場合も出てくるでしょうが、それだけ面白味もあると考えています。まだ手がけている専門家は少ない。著作権契約については、当面、試行錯誤が続くというのが現実です。

著作権登録

 プログラムの著作物を創作し販売(発行)したが、他にまねされた時に権利主張をしたいので登録しておきたい。
 著作権を移転したので登録しておきたい。
 本を出版するので、出版権を設定したい。
 誰の著作物か、いつ発行・公表されたか、いつ創作したか(プログラムの著作物)などの事実を公示する必要がある場合あるいは著作権が移転したり、出版権を設定したような場合に取引安全のため第三者対抗要件として登録します。なお、登録されたからといって著作権がその者に必ずあることにはなりません。
 登録先は文化庁又はソフトウェア情報センター(後者はプログラムの著作物のみ)。

※著作権を登録すれば特許も保護される、などとという団体があるようですが、著作権(創作的表現の保護)と特許権(技術的思想、アイデアの保護)は別のものですので、うまい話にはお気をつけ下さい。

著作権紛争の概略

1.一番多いのは真似た真似ないという紛争だろう

Aの創作的な表現として、原著作物ができた。Bは、それを見たり聞いたりした(依拠)。そして、Bはその創作的表現を真似て類似著作物を作り、著作権(著作権法第21条~第27条)違反の利用行為をした。

 

AはBが原著作物に依拠し、模倣し、類似著作物を作り違法利用行為をしたとして、民事上(例:差止、損害賠償請求)、刑事上(原則、親告罪)の請求をしていくことになる。 
Bは「原著作物は著作物ではない。依拠していない。真似ではなく独自の著作物である」などと反論する。あるいは、「著作権の制限規定により利用可能」であるとか、「保護期間切れ」だとかを立証する。
 
真似た真似ないのポイントは、B著作物が原著作物の創作的な表現を再製(表現上の本質的特徴が同じである)していれば侵害であるというところである。しかし、類似性について最終的に白黒決着つけるのには裁判しかないだろう。また、著作権侵害でなくとも不正競争と判断される場合もでてこよう。

 

2.著作物等の無断利用
著作権法は例外的に権利者に無断で著作物等を利用できる場合を定めている。(著作権法第30条以下及び102条)これら[権利制限規定」の要件に当てはまるときは、無断で利用できる。しかし、その場合でも出所の明示や補償金の支払いをしなければならない場合があるので注意が必要である ※「等」は著作隣接権に関するものをイメージしています。

 

3.著作物制作委託契約

Aは大金を出して著作物の制作を外部のBに委託した。出来上がった著作物についての著作権者はBである。Aが著作物を複製して利用するときは、Bから権利主張されないために手をうっておくべきだろう。